「プリン事件」
これは10年前後くらい前のひな祭りの日の話。
俺は、急に思い立って、我が家の女子連中向けに、ケーキ屋のプリンをご馳走しようとわざわざ自転車を走らせました。
ちょうど巷でトロトロ食感のプリンが流行ってた頃で、俺も覚えたての味を自慢したかったのです。
で、一応男性陣もいますので、これのフォロ-にと近くのスーパーで三個100円のプリンも買いました。
ケーキ屋のプリンは、ご存知の様に高いからです。
で、これをパゴスに説明しました。
「ひな祭りのプリンを買ってきたんだけど、男は別に男用の安い奴があるから、高い方は食べないでくれ」
パゴスのことです、一度説明しただけでは間違いなく失念しますから、俺は慎重を期して念を押しました。
「分かった?安い方のプリンを食べるんだぞ?」
すると、その時ちょうど孫か誰かと話していたパゴス、人に指図されるのが何より嫌なパゴスは、さも面倒だと言わんばかりの勢いで
「わーかった!」
と言い放ちます。
しかし俺がしばらく席を外し、次に階下に下りてみると、パゴスの姿が見当たりません。
俺「あれ?パゴスどこ行った?」
母「ああ、あれだけ念を押されたのにプリン食べちゃって、慌てて買いに行った」
代わりに買ってきたものは、どこのスーパーでも売ってるありふれたマンゴープリンでした。
ちゃんと俺に訊けば売ってる場所分かったのに、それでも訊かない理由はただ一つ。
「ごめん」が言えないから。
謝らずに無かったことにしたいから。
そもそも、一たび慌てると、元々ほとんどない判断力を完璧に失います。
考える間もなく車のエンジンをかけたのかもしれません。
「リンス入りシャンプー事件」
基本、俺はみだしなみにことについては全く気にならない性質で、シャンプーについてもこだわりがなく、家族についでで頼んでしまうことが多いのですが。
俺は脂性のフケ症で、リンス入りの中途半端なシャンプーだとどうも洗った後のキレが悪い気がしていたんですね。
それなのに、パゴスに頼んで買ってきてもらったシャンプーはリンス入りだったのです。
一回目は我慢して使いました。
買ってきてもらっておいて、文句を言うのは気が引けたのです。
しかし、それとなく遠まわしに、「リンス入りは肌に合わない」ということを伝えたんです。
それでも、二度目もリンス入りでした。
あの世の中の全てを都合よく解釈してるパゴスのことですから、きっと気を使って遠まわしに言ったのがいけなかったのでしょう。
しかし今度も立場を弁え、前回よりはやや強い調子であるものの、やはり遠まわしに伝えました。
しかし三度目もリンス入りです。
なぜこうまでリンス入りにこだわるのかよく分かりません。
ちなみに自身は、頭部の50%以上がツルツルなデンジャラス爺さんであるにもかかわらず、シャンプーはこだわって「椿」を使ってました。
あんな高いものを、半分は捨ててるのと同じじゃないか。
さすがに俺もこれではダメだと思い、今度は自分で買ってこようと考えます。
ところが、そういう時に限って、パゴスの方から「お前、シャンプーが切れてただろ、買ってきてやるよ」と言い出します。
そこで折れる俺も弱いのですが、さすがに四度目ですから、今度は大丈夫だろうと頼んでしまいます。
その代わり、今回ははっきり念を押します。
「リンス入りはダメだから、リンスが入ってない奴を買ってきて」
「分かった。リンスが入ってないシャンプーだな?」
復唱があったので、さすがに今回は大丈夫だろうと思ったのですが甘かった。
20~30分後、パゴスが帰ってきました。
「買ってきたぞ~。今度は大丈夫、ちゃんとボトルに『リンスがいらないシャンプー』って書いてあるから」
「リンスがいらない」って、それ、「リンスが入ってる」ってことなんじゃあ?
アホ過ぎて言葉を失いました。
元々パゴスは、何か使いを頼むと、必ず何か一ひねり加えたものを買ってきます。
自転車の空気入れを買えば、変な折りたたみ式のものを普通の五倍からのカネ払って買ってきて、そういう意味なく複雑なものですからすぐに壊れてしまいます。
次に俺が買ってきた価格五分の一の普通の空気入れは、三年近く使えました。
エコがブームだった時は、俺が「ポリバケツを使って雨水を利用しよう」と言えば大反対。
俺が庭に置いたバケツを強制撤去するまでの騒ぎになります。
さすが他人の手柄はとりあえず潰すパゴス。
その一週間後、「風呂の残り湯を再利用する」と俺に対抗して言い出し、風呂の水を汲み上げるポンプを買ってきます。
それを使って風呂の水を汲み上げたのはたった三回。
そのポンプはたった三回しか使われずに、今は物置の片隅で埃を被ってます。
その無駄で何にも転用できないものに一体いくら投資したのか、俺は怖くて訊けません。
およそ「費用対効果」という概念がない。
例えば、買ってきた食材を、使い切らずに平気で放置する。
日保ちするものならいいですよ?
野菜とかも、平気で残しますからね。
そのくせ「今日は10円安いものを買ってきた」とか自慢する。
120円の野菜、10円安くても、1/3使い切らずに捨てれば差し引きで30円の損なんですけど。
他にも、口頭では絶対に忘れるからと、メモを書いて使いを頼んだのに違うものを買ってきたこともあります。
なんで?
書いてあるものを買ってくればいいだけなのに、それで失敗する大人がいます?
たぶん、店に入った時くらいにメモを見て、「よし覚えた」と思って確認もせずに記憶を頼りに買ってきたのでしょう。
メモを確かめる。
たった5秒でできることさえ鬱陶しく感じるくらいに、絶望的にせっかちなのです。
スペック子供以下。
よく無事故で引退できたな…。
こういう事をちゃんと覚えていれば、「自分は仕事ができる」などとは夢にも思えないはずなんですがね。
どうも脳が、都合の悪い記憶は完璧に選択消去できる、破滅的にプラス思考な仕様になってるようです。
まだまだ逸話がありますが、思い出したらまた書きます。